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ピンマイクから生の声~ゴルフ中継に新しい楽しみ方~【スポーツコラム】 - 時事通信ニュース

2020年07月05日09時01分

「ザ・マッチ・チャンピオンズ・フォー・チャリティ」に参加した(右端から)タイガー・ウッズ、ペイトン・マニング、トム・ブレイディ、フィル・ミケルソンの各氏=2020年5月24日、米フロリダ州ホーブサウンド【EPA時事】

「ザ・マッチ・チャンピオンズ・フォー・チャリティ」に参加した(右端から)タイガー・ウッズ、ペイトン・マニング、トム・ブレイディ、フィル・ミケルソンの各氏=2020年5月24日、米フロリダ州ホーブサウンド【EPA時事】

 ◆ゴルフジャーナリスト・舩越 園子◆

 未曽有のコロナ禍は、世界のゴルフ界にも、多大な影響を及ぼしている。米女子ツアーは2月後半から、米男子ツアーは3月半ばから休止状態。選手もキャディーも、すっかり姿を消している。

 とはいえ、屋外で密集しない状態でプレーするゴルフそのものは、「感染リスクが低い」というリポートが、米国の医療専門家から出されたおかげで、パンデミック(世界的流行)下でも、プレー可能な数少ないスポーツの一つと見なされたことは、ゴルフにとって大きな幸運だった。

 しかし、都市封鎖を行った米国では、ゴルフを一時的に禁止した州が幾つもあり、そうした州のゴルファーが、プレー可能な州外へ移動して、こっそりラウンドしたことが激しく批判されたり、果ては逮捕劇まで起こったりした。

 日本でも、緊急事態宣言の下、都道府県をまたいでゴルフに行った人々や、密集状態でゴルフ練習していた人々を監視したり、批判したりという動きが見られた。

 ◆580万人が視聴

 そうした殺伐とした空気を緩和し、医療従事者や困窮している人々を支援するため、米ゴルフ界は5月に、大掛かりなチャリティーマッチを2週連続で開催した。

 17日に行われた「テーラーメイド・ドライビング・リリーフ」は、世界ナンバー1のロリー・マキロイ(英国)と飛ばし屋ダスティン・ジョンソン(米国)がペアを組み、リッキー・ファウラー&マシュー・ウルフという米国の若手ペアと対戦。

 人気選手たちのゴルフを見るのは久しぶりとあって、大勢のファンがテレビ中継にくぎ付けになった。

 4人の選手全員が短パン姿。感染防止上、キャディーを付けず、全員が軽量バッグを担ぎ、歩いて回った。一流選手たちのこうしたセルフプレーは極めて珍しく、ゴルフの原点に立ち戻ったようで、とても新鮮に感じられた。

 その翌週に開催された「ザ・マッチ・チャンピオンズ・フォー・チャリティ」は、ゴルフ界とNFL(米ナショナル・フットボールリーグ)界のスターの供宴だった。

「テーラーメイド・ドライビング・リリーフ」に参加し、自分でゴルフバッグを担いでラウンドする(左から)ロリー・マキロイ、ダスティン・ジョンソン、リッキー・ファウラー、マシュー・ウルフの各選手=2020年5月17日、米フロリダ州ジュノビーチ【AFP時事】

「テーラーメイド・ドライビング・リリーフ」に参加し、自分でゴルフバッグを担いでラウンドする(左から)ロリー・マキロイ、ダスティン・ジョンソン、リッキー・ファウラー、マシュー・ウルフの各選手=2020年5月17日、米フロリダ州ジュノビーチ【AFP時事】

 タイガー・ウッズとペイトン・マニング、フィル・ミケルソンとトム・ブレイディがペアで戦った、このマッチの視聴者数は、580万人を記録したという。

 どちらも大勢が堪能し、チャリティーマッチとしては大成功だったのだが、とりわけ後者の視聴率が大きく伸びた最大の理由は、選手の胸元に小さなピンマイクを着けたことだった。

 「ザ・マッチ」では、4人の選手が1人ずつ、乗用カートに乗って自ら運転。その時、スーパースターたちが何を思い、何をささやくのかが、全てマイクを通して視聴者に明かされ、それが何よりの見どころになった。

 冗談めかした言葉を相棒のマニングに掛け続けたウッズには、余裕があふれていた。いつになく緊張していたミケルソンが、終盤に向かって冗舌になっていく変化は、なんとも面白かった。

 ◆マイクによる淘汰も

 これを見た欧州ツアーのキース・ペリー会長は「ツアー再開の折りには、ぜひとも選手たちにピンマイクを着けたい」と、うなずいていた。

 米ツアーでは、これまでにも、試験的に選手にマイクを着けたことはあったが、今回はピンマイク一つで、テレビ中継が大いに盛り上がることが実証されたのだから、6月のツアー再開から本格採用されたことは、大いにうなずける。

 いわば「マイクの効用」がコロナ禍で再発見、再認識されたわけだが、それと同時に、マイクを通して聞こえてくる選手たちの声を「どんなリポートより生々しい」と視聴者が絶賛していることは、リポーターや現場記者の存在意義が問われる事態でもある。

 そう、ストレートに、聞いて伝えるだけのリポートは、マイクの威力にはかなわない。しかし、選手たちの言葉の裏側や、行間に込められた真意まで、ひもといていくリポートなら、マイクにはなし得ない人間のワザとなる。

 詰まるところ、マイクによる「淘汰(とうた)」が行われようとしている。

 それも、コロナ禍がもたらした産物の一つ。私自身、その産物を真摯(しんし)に前向きに受け止め、気を引き締めて頑張ろうと思っている。

 (時事通信社「金融財政ビジネス」2020年6月22日号より)

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July 05, 2020 at 07:09AM
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