【権藤博の「奔放主義」】
6月19日開幕で動きだした今季のプロ野球は、例年の143試合制を短縮して120試合程度で覇権を争うことになる。
そこで、「あとで挽回するという考え方はよくない。開幕から100%で」とさっそく、スタートダッシュの重要性を強調したのがDeNAのラミレス監督(45)。短期シーズンで出遅れは命取りという認識は他球団の首脳陣にもあるようで、「開幕から投手をどんどんつぎ込むという戦い方は当然、あり得る」という声も聞こえてくる。
私の考え方はまったく違う。シーズンが40試合になるのならともかく、143試合も120試合もそう変わりはしない。120試合だって十分に長丁場。試合数短縮という言葉に踊らされ、本当の勝負は残り30~20試合という定石を忘れると、いたずらに選手を疲弊させるだけで、痩せ馬の先走りという結果を招く可能性が高い。
コロナ禍により、選手は3月15日を最後に実戦から遠ざかり、数カ月間の自主練習を強いられてきただけになおさらだ。プロの選手はそんなにヤワではないが、だからといって首脳陣が開幕から鞭を振り上げて選手の尻を叩くのは違うだろう。
横浜(現DeNA)が38年ぶりのリーグ優勝を果たした1998年、監督だった私はシーズン前から抑えの大魔神・佐々木主浩に、「おまえを使うのはセーブがつく場面の九回1イニングのみ。ただし、残り20試合を切ったら、オレに任せてくれ。八回からでも行ってもらう」と言っていた。それまでは、優勝争いの輪から外れないようにしながら、ただただ我慢。中継ぎ投手にローテーション制を採用したのも、とにかく本当の勝負どころまで投手を疲弊させないためだった。その結果、選手がリーグ優勝、日本一を勝ち取ってくれた。
ましてや今季は、CSが中止になる可能性もある。かねてCSの廃止を訴えてきた私にすれば、これは大賛成。CSという短期決戦で日本シリーズ進出を決める方式は、最も重みがあるはずのペナントレース優勝の価値を貶めるものだし、たった6球団しかないリーグのうちの半分に日本一のチャンスを与えるのは甘すぎる。
今季、そのCSがなくなれば、優勝以外は2位も6位も一緒という本来のペナントレースのあり方に戻る。首脳陣や選手の評価も変わってくるだろう。2位や3位で首がつながってきた監督、コーチの手腕がシビアに査定されれば、曖昧になっていた責任の所在もはっきりするはずだ。2位狙い、3位狙いは通用せず、純粋に頂点を目指し、そのための戦略が求められる。
どれだけ我慢ができるか。今季は例年以上に監督の胆力が問われるとみている。
(権藤博/野球評論家)
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May 23, 2020 at 07:26AM
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